在宅で老いを迎える場合の問題点
私たちは、かつて日本人が経験したことのない長命時代に生きていることをお分かりいただけたと思います。しかも高齢期に障害をもって生きる期間が伸びていることも。つまり家の中の事故を防ぎ、車イスや手すりなどの道具に補完されて暮らすとしても限界があります。介護を必要とする期間が必ずあるのです。かつては病院が介護機能も担っていましたが、健康保険のパンクなどで、それはできなくなりました。その人手をどこに求めるかが、在宅で老いを迎える一番の問題なのです。
人手の問題を考えるときに、戦後の家族形態の変化と、農業社会から工業、サービス社会への産業構造の変化が意味することもきちんと捉えておかなければなりません。
いまも、60歳代以上の方々は、最近の女性の意識の変化に気づいていらっしゃらない方がまだ多いようです。
結婚の変化と“嫁”の位置
戦後、結婚は両性の合意に基づき自由に行なえるようになりました。戦前までの結婚が、家を継承する子孫を残すために行われていたことと比べると大きな変化です。最近、
” 嫁”という言葉を使わなくなったことに気づかれていますか?行政では”長男の妻”という表現をします。また結婚した二人に、赤ちゃんの誕生を聞くことも減っていますでしょう。結婚した二人は、二人の幸福のために人生を使うことができるようになったのです。子供をもつことも二人の自由意志に任されるのです。子供を持たない共働きの夫婦をさすディンクス(DINKs/double income no kidsの略)という言葉が生まれた背景には、産業構造の変化があります。どこから収入がもたらされるかという問題です。農業のお宅の場合では、家族全員が労働に携わり、入ってきた収入は家の収入として自然に家族に配分されます。工業社会やサービス社会では、会社の収益が、賃金、給与というかたちでという働いたその人に配分されます。個人に支払われた収入を、家族のために使うというように変わったですが、男女の配分に差が大きかった時代は、男性の給与で女性が食べさせてもらうというかたちで、古い家族形態の頃のような、夫の家系中心の意識が維持されていました。しかし男女の賃金格差が解消されるにつれ、女性も仕事につき、収入を得る家庭が増えていきます。女性も責任ある仕事をするようになり、負担も大きくなります。そのため無償の家事労働は夫婦で分担する家庭も増えています。
子供たち世代は、二人の収入の持ち寄りによって運営される家庭が増えていくのが、これからの時代の方向です。そうした流れの中にあって、親の介護の担い手として子供夫婦とどのような関係を構築するのかを、今では各自が自分で決定しなければならないのが在宅の最も難しいところです。昔、親との同居が当たり前だった頃とはここが大きな違いです。それに、複数の子供たちがいれば、財産分与の問題がからみますからね。
対策としては、在宅で老いを迎える場合、自分たちがどのような老後を送りたいと考えているかを明確にしておくこと。資金計画をきちんと立てておくこと。そして子供たちの手を借りなければならない場面をはっきり認識し、子供の妻たちも交えて、協力してもらえるか意見を聞き、その意見を基に、実際的な在宅計画をもっておくということになります。介護などに協力をしてもらうことが、いつ発生し、どれぐらいの期間になるか分からない。しかも頼りにしていた子供が先に亡くなるということだってありますから、少なくとも2段構えくらいの対策は心積もりしておくことが必要です。
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